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  1. 足あと帳(0)11/03/30(水)17:02
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承前

 投稿者:寺郷鉄飛之介  投稿日:2011年 5月 2日(月)10時28分1秒
   このたび縁あって「閑輪亭日乗」と題した一文を綴ることになった。したがって今回の文は、その最初、少し気取って言えば起筆口上ともいうべき性格を帯びた文になるのだが、そこに「承前」という二文字を置くのはなぜか。
「承前」は、よく雑誌などの連載小説で見掛けることがある文句である。「この文章は前号からの続きなんですよ」ということを作者が意思表示している。「前号からの続き」と言わず、わざわざ「承前」と言う。「前号からの続き」と記すよりちょっと気取っている。やや気障であるが、それなりの人が使えば、格調があるような気がする。「前号からの続き」より頭がいい感じがする。
それで小生も使ってみた。使いたかった、が本当かもしれない。「承前」と置けば、読者はきっと「それなりの人が書いているんだな」とか「知的だ」とか思ってくれるんじゃないかと計算したのである。

だが、まったくそれだけかというと、そうではない。今回、「承前」を使ってもいいような経緯があるにはあるのである。そのことを不勉強な読者のために少し説明しなくてはならない。不勉強な人のために何かをすることは腹立たしいことだが、富める者が貧者の群れに手を差し伸べるように、これは小生の良心が人間関係はかくあるべしと判断するので、少し説明してあげる。

小生は以前、もう数年前になるだろうか、TCCなる自転車愛好者グループのウェブサイトに「脱輪亭日乗」と題した文を綴っていたことがある。TCCとは「東京サイクリングクラブ」の略称で、このクラブはNATO軍(北大西洋条約機構軍)やワルシャワ条約機構軍を想起させるほど、実に多くの国・地域から人々が参加していた。そんな国際的で立派なサイトの隅っこで、「どーせ誰も読まねえだろー」と高をくくり、反米を基調テーマとして永井荷風にまつわる下ネタとか地域差別、旧赤線探訪、東京徘徊、地名検分などをウソで固めて書いていた。

自転車愛好団体のサイトなのに自転車の話がほとんどなく、アメリカや鶴見の悪口ばかり書いていたから、ごくごく少数の読者から「あれはなんだ」といったお叱りはあった。しかし「文句あっか」の心意気でいた。ところがある方面からお咎めがあったのである。小生、青天の霹靂とはこのことかとびっくり仰天、思わずのけぞってしまった。

ある方面とは言わずと知れたウェブ上に張り巡らされた英連邦の防諜網当局である。戦後日本の食生活への帝国主義的干渉に他ならない“小麦粉喰え運動”の嚆矢となったパン給食を罵倒したのが引っかかった。大相撲千秋楽で聞くヘンなアクセントの日本語で、「アナタハ アメリカ~ノ オンジョウ~ニ ツバ ヲ ハクノデスカ?」と来た。さらに小生の小学校時代の給食時間の映像まで送って来た。映っている幼い小生は、こともあろうに「ボク、パン大好き!」とか言って夢中でパンを頬張っている。さらに驚いたことに、欠席した近隣の女子同級生へパンを届ける役目を担った時、届けずにこっそり悪友と胃袋に収めた場面まで映っている。おまけにパンが届かなかった母娘が登場し、「カンリンテイ君を一生恨みます。恥知らず!」とカメラに向かって涙ぐんでいる(これぞオンリーさんのパンスケ母娘だ。敗戦はみじめだ)。しめくくりはまたもやヘンな日本語で「アナタ~ハ パンドロボー デス アア ムジョウ ヲ シッテマス~カ?」だった。

 小生はインターネットの恐ろしさをまざまざと思い知った。あらゆることは監視されているのだ、と。荷風が当局の目を逃れて密かに日記を書き綴ることができた時代とは違うのだ。もう筆を措くしかない。もう二度と、ニューヨークとサンフランシスコを除くアメリカはバカだと言ったり、鶴見は神奈川の恥だと言ったり、鶴見に次ぐ恥は横須賀だと言ったり、山梨交通は全員アホだと言ったり、池袋は埼玉県であると言ったりするのは、もうやめようと思ったのであった。
周囲に漏らすのも危ない。ハンバーガー好きは米国の、ウイスキー好きは英国の、セックス好きはフランスの、ラーメン好きは中国の回し者の可能性が高い。この論理で言うと、パスタ好きはイタリアの、ビール好きはドイツの、となるが、能天気なイタ公は英連邦からバカにされ仲間はずれだし、ドイツも何かと言うとナチス・ヒトラーを持ち出され打ちひしがれて栄光を過去のものにした。学問、芸術分野で発揮されたドイツの無二の輝きは凋落したままで、日本同様ずっと反省させられている。結局、諸外国の中で、日本の本当のトモダチは独伊なのだ。
と、こんな素朴な感想を漏らすことも危険なのである。もうやめなくてはなるまい。今日からは三猿のように生きよう――。

 あれから数年が経過した。三猿を心掛けた静かな暮らしはそれなりに順調だった。やがて小生も独居老人となり、戸籍上では200歳くらいになった時、白骨化した状態で行政当局に発見されるのだろう。発見した役人は「あー、コイツ、無年金者だ。家族がちょろまかしたわけじゃなし、まいっか」と言うだろう。それもまた良しと諦観していた。
しかし2011年、時代は大きく変わった。巨大地震、巨大津波、制御不能の巨大システムを前に、日本は生まれ変わりを余儀なくされるようになったからである。そこで一からやり直すことを余儀なくされるようになったからである。このような状況で英連邦の防諜網やパン泥棒呼ばわりを恐れてどうする。言うべきことは言わねばならない。そうでなければ『箱根八里』を歌う資格はないのだ。そして再びペンを取ることにしたのである。

 要約するとこういうことだ。「脱輪亭日乗」の続編として、この「閑輪亭日乗」を始めるよ、ということなのである。続編的な位置づけだから「承前」なんだよ、ということである。だから「承前」と置いたことは、別におかしくないんだよ、ということなのである。

 次回は田園調布探訪。国分寺崖線から丸子川・多摩川へ落ちる坂を鑑賞し、併せて田園調布人のネーミングセンスを検証する。
 

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